第1回:ふわりの森って何ですか?

空総研: まずは“ふわりの森”(>>詳しくはこちら)というアートプロジェクトについて教えていただけますか?

シムラ氏: “ふわりの森”は僕自身のアート作品の中に登場するモチーフ、赤いマントをつけた白いウサギのヒーロー“ふわり”を題材に「DREAM -人の夢とは何か?-」をアーティストたちがアート作品化し、それを、成田国際空港を囲む広大な森から世界に向けて発信するランド・アート・プロジェクトです。つまり、ここ成田がアジア最大の現代アートの森になるということです。
 2007年にアップルストア(銀座・渋谷・心斎橋)で開催されたシムラユウスケ特集でお話させていただいた僕の夢、ふわりの“アート飛行機”を飛ばすことも、このプロジェクトと繋がっています。空にはふわりのジャンボジェット機が飛び、地上には“ふわりの森”という空港がある、そうゆう都市を創造していくことです。しかし、2011年の東日本大震災でランド・アートに対する見方が変わりました。
 震災時、僕はニューヨークから帰国して東京にいました。翌週にはドバイ(モスクワ経由)でエキシビションが予定されているので、交通が麻痺した中、東京から成田に戻りました。そこで寸断された道路を目の当たりにしました。僕の地元も想像以上に被災していることを実感したのです。
 また震災の翌年には自分の母校である酒直(さかなお)小学校が閉校になると知らされました。成田では2013年から2015年3月にかけて8校が同時に閉校となります。どの地方も抱える過疎化という問題が他人事ではなくなりました。住民や子どもの数は減り、このままでは豊かな森の景観を維持できないレベルにまで来ているのです。
 震災と母校の閉校。この2つの出来事が、ふわりの森をより「地域」を軸したランド・アートにさせることになりました。まず考えたのが、空き家になっている古民家や物件等を、アーティストの制作スタジオにすることでした。僕自身が、一人の国際人として地元に拠点を構え、世界に向けてアート活動の発信を行う。それと一人のアーティストとして地域を保全していく仕組みを作っていく。
 その仕組みづくりの為のプログラムは3つあります。

●国内外の注目アーティスト達が集まるアートギャラリーの開設
●古民家を活用した国際アーティスト イン レジデンスの開設
●地域プログラム 第一弾/ FLY DREAM SAKANAO139 記憶美術館

【目次】
第1回
ふわりの森って何ですか?
第2回
成田空港でのエキシビションから出発
第3回
閉校となる母校を記憶の美術館に
第4回
“ふわりの森”アートプロジェクトが秘める可能性
第5回
アーティスト・シムラユウスケの空港観
第6回
これからの空港に必要なのは、地域との“共生”
第7回
ふわりの森の「NARITA」には「ART」があって、アートの中に「I(人)」がいる
【プロフィール】
シムラユウスケ氏
1981年生まれ。写真、ドローイング、プロジェクトワークなど様々な視点から自身の表現の根源になった、ユーリイガガーリンの「地球は青かった」の言葉から「人の夢とは何か」を作品化し、国内外で作品を発表。東京、ニューヨークを拠点に中東、北欧、アジアでの個展を展開し、各国でコレクションされている。2011年東日本大震災以降、自身の出身地でもあり被災した成田国際空港を包み込むランドアート“ふわりの森”のプロジェクト・ディレクターとしても活動。
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