第5回:アーティスト・シムラユウスケの空港観

空総研: 今までどのくらいの空港を利用したことがありますか?

シムラ氏: 正確な数は分からないですけど定期的1ヶ月に1回は成田空港に戻ってきているので。そう考えても20~30都市だと思います。

空総研: 空港に到着して、空港で必ずやることはありますか?そのまま何処にも立ち寄らずに目的地に行きますか?

シムラ氏: 滞留するべきシステム(デザイン等)やインフラがあれば空港に留まりますね。システムって言うのは、例えばアブダビ国際空港は都市化され、ロンドン・ヒースロー空港は都市デザインを組み込んでいる。だから空港にいるだけで体感するものが多くあり、見るものもある。
 シンガポール・チャンギ国際空港はホテルのようなきめ細かいケアが心地よさを感じています。チャンギに関しては、以前よりも滞留時間が長くなりました。空港から市内が近いことから時間にも余裕を持てて気が付いたら到着して2時間くらい経っています。
 一方でニューヨーク、ジョン・F・ケネディ国際空港は、すぐに空港から出て滞留しません。到着したら、そのままメトロか、バスか、タクシーに乗って現場に向かいます。JFKとマンハッタンの距離が遠いことも影響しているのかもしれないです。

空総研: 空港に滞留するシステムって必要ですか?

シムラ氏: 去年、チャンギに滞留した時は、いいなと思いました。ソファーやカーペット等、すべてがホテル仕様で統一されていたのでリラックス感を得られました。上手く身体と気持ちのシフトチェンジできました。
 空港のコンセプトがしっかりしていると、目に見えないことも含めて利用者として得られるものが多いのです。それがなければ通り抜けてしまうのですが、チャンギや仁川国際空港はきちんと組み込まれています。この場所に着いたら「座らせる」、「食べさせる」、「休ませる」のステルスのような機能性が用意されています。
 成田国際空港は、モール化され、空港利用者以外にも地域の方開かれたもショッピングモールであるというコンセプトは体現できていると思います。やはり本屋があるのは日本っぽいですよね。他の海外の空港であまり本屋に立ち寄らないので、日本にはマンガ文化をはじめ本屋があるのが意外な点なのかもしれないです。

空総研: では無意識のうちに誘われているという感じですね。空総研のホームページにも書いていますけど、国の玄関口というのは、その国を感じる何かがあるんでしょうね。

シムラ氏: 10年前くらいであればモスクワ空港は1分でも居たくないと言われた冷たい空港でしたし、それぞれの国(経済、宗教、軍事等)の背景もあるかもしれませんね。人間関係というか、外交関係がすごく顕著に空港のシステムに現われていると思います。
 日本は誰かに贈り物を贈るという点でもお土産屋さんが多くあるのもわかります。成田国際空港のそうゆう点も好きな部分の一つです。

【目次】
第1回
ふわりの森って何ですか?
第2回
成田空港でのエキシビションから出発
第3回
閉校となる母校を記憶の美術館に
第4回
“ふわりの森”アートプロジェクトが秘める可能性
第5回
アーティスト・シムラユウスケの空港観
第6回
これからの空港に必要なのは、地域との“共生”
第7回
ふわりの森の「NARITA」には「ART」があって、アートの中に「I(人)」がいる
【プロフィール】
シムラユウスケ氏
1981年生まれ。写真、ドローイング、プロジェクトワークなど様々な視点から自身の表現の根源になった、ユーリイガガーリンの「地球は青かった」の言葉から「人の夢とは何か」を作品化し、国内外で作品を発表。東京、ニューヨークを拠点に中東、北欧、アジアでの個展を展開し、各国でコレクションされている。2011年東日本大震災以降、自身の出身地でもあり被災した成田国際空港を包み込むランドアート“ふわりの森”のプロジェクト・ディレクターとしても活動。
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