第6回:これからの空港に必要なのは、地域との“共生”

空総研: これからの空港ってどのようになって行くと思いますか?

シムラ氏: どこの国も言えることですが、“共生”がキーワードになると思います。グローバル・スタンダードは“空港=都市”にシフトされていますよね。留まる場所があって、食べる場所があって、住む場所があって、宗教国に行けば礼拝堂もありますしね。そうなると地域との共生が必要になると思います。その先にあるのは、空港周辺の環境整備が今後の価値につながると思います。ふわりの森は、その面を創っています。

空総研: 日本では、成田国際空港と東京国際空港(羽田空港)が礼拝堂を作りましたね。訪日観光客の増加と2020年を見据えてのことだと思いますが重要ですよね。

シムラ氏: 今回インドネシアのアーティストも“ふわりの森”に滞在しているのですが、イスラム教徒である彼が日本に来て最初に確認したのが、足を洗える場所があるかどうかでした。
 日本は、公共トイレなど、海外の人が驚くほどユニバーサル仕様に優れているので、“世界の人のライフライン”という視点を持って技術を組み込んでいくことはできるはずです。だからそういったシステムは必要か、必要ではないかではなく、必然なのではないでしょうか。
 去年、インドネシアでのプロジェクトでジャカルタ行きました。インドネシアは、インド、中国、アメリカに次いで世界第4位の人口です。海外の市場としても注目されていますし、向こうの文化を知るのは当然です。またインドネシアからの訪日客が増加していることからも礼拝堂は自然の流れのように感じます。

空総研: インドネシアを訪れていかがでしたか?親日国と言われていますが・・・。

シムラ氏:  アーティストという立場もあって疎外感はなかったです。皆さん日本の事を好きだし、アニメは多く見ているので、日本の事も知っています。
 仕事面に関しては、日本にいるインドネシアの方って仕事が丁寧だなと思う部分がありましたが、現地に行くと少し雑な部分が目立ちました。ただ、こちらがフォローすれば、2度目は自分でケアしてくれます。またお互いに気遣いできる部分は日本の感覚に近かったですね。

空総研: インドネシアのアーティストの方は作品づくりで来たのですか?

シムラ氏: 今回、レジデンスに滞在して作品づくりをしています。
 僕がジャカルタでお世話になったコレクターからの依頼です。「彼(アーティスト)が日本に滞在している間、制作環境を提供してあげてほしい」とお願いされたのがきっかけです
 彼は、成田でのリサーチを行いながら小学校の使わなくなった器具を使って作品を作っています。また僕らが小学校で授業をするのに帯同したりしています。

【目次】
第1回
ふわりの森って何ですか?
第2回
成田空港でのエキシビションから出発
第3回
閉校となる母校を記憶の美術館に
第4回
“ふわりの森”アートプロジェクトが秘める可能性
第5回
アーティスト・シムラユウスケの空港観
第6回
これからの空港に必要なのは、地域との“共生”
第7回
ふわりの森の「NARITA」には「ART」があって、アートの中に「I(人)」がいる
【プロフィール】
シムラユウスケ氏
1981年生まれ。写真、ドローイング、プロジェクトワークなど様々な視点から自身の表現の根源になった、ユーリイガガーリンの「地球は青かった」の言葉から「人の夢とは何か」を作品化し、国内外で作品を発表。東京、ニューヨークを拠点に中東、北欧、アジアでの個展を展開し、各国でコレクションされている。2011年東日本大震災以降、自身の出身地でもあり被災した成田国際空港を包み込むランドアート“ふわりの森”のプロジェクト・ディレクターとしても活動。
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